60-80年代洋楽

【ジャンル解説】サイケデリックロックとは?誕生の歴史をわかりやすく解説【初心者向け】

音楽ジャンルの一つ「サイケデリックロック」

よく耳にするジャンルではありますが、

サイケ初心者さん
サイケ初心者さん
じゃあ実際サイケってどんな音楽なの?

と聞かれたら説明に困ってしまいますよね。

なんとなく極彩色豊かで、効果音が多くて、愛と平和について歌っている・・・そんなイメージではないでしょうか。

本記事ではそんな「サイケデリックロック」について、初心者向けに分かり易く時系列に沿って解説していきたいと思います。

この記事を読めば、サイケデリックの歴史についてざっくりと理解することができますよ。

本記事の内容

・サイケデリックロックとは?一言でいうと・・・
・サイケデリックロック成立までの歴史

ねここしゃん
ねここしゃん
サイケの歴史を説明できるようになろう。

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サイケデリックロックとは

サイケデリックの本質・・・それは「ドラッグ」

「サイケデリック」について解説するにあたって避けては通れないトピックがあります。

それが「ドラッグ」です。

初心者に簡潔にサイケについて説明するなら、サイケデリックとはすなわち「ドラッグ(幻覚剤)と西洋人の出会い」といえるでしょう。

それは一体どういうことか。
ここからはそんなサイケの歴史を、時系列に沿って詳しく解説していきますね。

ねここしゃん
ねここしゃん
サイケとドラッグは切っても切り離せない。

時系列に沿って解説!サイケデリックロックの歴史

①西洋人とドラッグの出会い

サイケデリックムーブメントが起こった1960年代から遡ること少し前。
1943年にアルバート・ホフマンというスイス人学者が世界で初めてLSDの抽出に成功します。

ホフマンは自らを被検体とし、LSDの幻覚作用を体感しました。
指先の皮膚からLSDを吸収したホフマンは、「極めて刺激的な幻想に彩られ、日光が異常に眩しく感じ、意識がぼんやりとし、異常な造形と強烈な色彩が万華鏡のようにたわむれるといった世界が目の前に展開していた」と語っています。

これが世界初のLSD幻覚作用発見の瞬間でした。

これを機に、この未知なる物質に西洋人はこぞって興味を示します。
小説家のオルダス・ハクスレーは、幻覚剤によるサイケデリック体験の手記と考察を記した知覚の扉(原題;The Doors of perception)を執筆。この本は当時のミュージシャンたちに大きな影響を与えました。現にこの本の原題からバンド名を取ったのがあのドアーズだったりするんですね。

ねここしゃん
ねここしゃん
「ハートに火をつけて」で有名なバンドだね。

『知覚の扉(原題:The Doors of perception)』

1954年発行のオルダス・ハクスレーの著書で、幻覚剤によるサイケデリック体験の手記と考察である。サイケデリック・ロックバンドのドアーズも、バンド名を本書から取ったという。(Wikipediaより引用)

他にも、解脱(仏教における解放、悟り、自由、放免を手に入れた状態)のための指南書チベットの死者の書も当時のミュージシャンたちはよく読んでいて、この本から引用した言葉を元にジョン・レノンは「tomorrow never knows」というサイケの名曲を書きます。

『チベットの死者の書』

チベット死者の書(チベットししゃのしょ)は、チベット仏教ニンマ派の仏典。いわゆる埋蔵教法(gter chos)に属する。バルド・トゥ・ドル(チベット死者の書)は、臨終の時から四十九日間(中陰)にわたって死者の耳元で話して読み上げられる枕経である。(Wikipediaより引用)

ねここしゃん
ねここしゃん
みんな未知なる幻覚剤に興味津々だったんだね。

そもそもこのような幻覚剤は、元々世界各地の宗教儀式と密接に結びついていて、ずっと人類の歴史の中にあったんですが、西洋人はそれを知らなかったんです。なぜなら彼らは仏教のいう解脱・解放とは対極である、より禁欲的な宗教(キリスト教)で発展してきた文化だからですね。

このように西洋人が未知なる幻覚剤と出会ったことで、精神的解放を目指すことを目的としたのがサイケデリックムーブメントなんです。

【ちょっぴり余談】
〜時代の犠牲になった才能たち〜

LSDの過剰摂取で身体に悪影響を及ぼし、いわゆる”向こう側”に行って帰ってこれなくなった才能あるアーティストも多くいます。例を挙げると、

  • シド・バレット(ピンク・フロイド)
  • ブライアン・ウィルソン(ビーチボーイズ)
  • スキップ・スペンス(モビー・グレープ)
  • ピーター・グリーン(フリートウッド・マック)

などのミュージシャンたちです。
彼らはある意味サイケムーブメントという時代の犠牲者といえるでしょう。

②ビートルズとLSDの出会い

LSDを端としたこのサイケデリックムーブメントはいよいよ音楽界にも影響を及ぼします。

1965年、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンがLSDと出会います。
彼らが招待された食事会で出されたコーヒーに無断でLSDを仕込まれていたんです。意図せずにLSDを飲んでしまった二人は幻覚作用によってトリップ状態に。
ジョージは当時のことを「テーブルについてドリンクを注文した途端、突然、今まで経験したことのない不思議な感覚に襲われた。人生で最高と思えるような感覚が集中的に押し寄せてきた感じだった」と回想しました。

この事件はビートルズに多大な影響を及ぼし、この体験の後に発表されたアルバムリボルバーはサイケデリックロックの原点と言われています。

ねここしゃん
ねここしゃん
ちなみにポール・マッカートニーもLSDに誘われたけど断ったそうだよ。

【ちょっぴり余談】
〜「リボルバー」ってどんなアルバム?〜

「リボルバー」は1966年8月に発売されたビートルズ7枚目のオリジナルアルバム。次作の「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」と共に、サイケデリックなアルバムと評されることが多いです。このアルバム制作当時も、ジョンとジョージは継続的にLSDを服用しており、幻覚状態で得たインスピレーションが本作に強く影響しています。

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③ビートルズの影響でサイケは一大ムーブメントに

「リボルバー」、そして次作の音楽史上初のコンセプトアルバムサージェント・ペパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドの発売を機に、サイケの方向に一気に加速していったビートルズ。

そんなビートルズの影響を受け、同時代の他のアーティストたちはこぞってサイケロックをやり始めます。

ルーツ志向のローリングストーンズはドラッグの影響下でアルバムサタニック・マジェスティーを発表。ジミ・ヘンドリックスも「サージェント・ペパー・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」に影響を受け、アルバムアクシス:ボールド・アズ・ラヴを発表します。

その他、ドアーズ、ジェファーソン・エアプレイン、グレイトフル・デッドなどサイケの影響下のバンドが次々と登場しました。

もう本当にこの時代はどのバンドもサイケをやっていたわけです。まさに一大ムーブメントと呼べるでしょう。

ねここしゃん
ねここしゃん
みんなビートルズのサイケに乗っかったわけだ。

【ちょっぴり余談】
〜サイケから派生して誕生したジャンル〜

そんなサイケミュージックから派生して誕生した音楽ジャンルが幾つかあります。まずはサイケの中でも特にヘビーな音楽を追求していたジミ・ヘンドリックスクリームは後に「ハードロック」の原型を作ります。
また、サイケの中でもよりも実験的な音楽を追求していたピンク・フロイド、ソフトマシーンらは後の「プログレ」の原型を作り出したと言われています。

④サイケの象徴「ウッドストック・フェスティバル」

サイケデリックブームが起きていた当時は、ベトナム戦争が勃発し、公民権運動が始まり、性の解放運動等も盛んだった激動の時代。

まさに皆が「愛と平和」を唱えていた時代です。

そんな時代の象徴的出来事と言われているのが、1969年にアメリカで開催された「ウッドストック・フェスティバル」という野外音楽イベント。30組以上のアーティストが出演し、入場者はのべ40万人以上。

この「ウッドストック・フェスティバル」はサイケムーブメントの象徴的イベントだったと語り継がれています。

このコンサートは表向きは愛と平和を唱えた大規模音楽イベントですが、実態はそこまで楽しいものではなかったという説もあります。なにせ当時はLSD全盛の時代。出演したアーティストや関係者、観客もみなLSDでバッキバキのトランス状態だったという証言がよく聞かれます。

ザ・フーのピート・タウンゼントは、「ヘリで会場入りし、スタッフに差し出された水を飲んだらLSDが入っていた」と当時のクレイジーな状況を後に自伝で記しています。

ねここしゃん
ねここしゃん
すげえ時代だ・・・。

『ピート・タウンゼント自伝 フー・アイ・アム』

ザ・フーのギタリストが遂に記した自伝! イギリスのロックシーンを牽引し続けてきたピートが、軌跡の全てを綴る超大作。《トミー》《四重人格》の制作秘史、ロック・レジェンドとの交友、亡きメンバーへの想い、児童ポルノ所持の真相—-全てを語る超大作。(Amazonより引用)

【ちょっぴり余談】
〜ウッド・ストックフェスティバルとは〜

ウッド・ストックフェスティバルは1969年8月15日から17日まで、ニューヨークで開催された大規模野外コンサート。3日間で約40万人の観客を集め、アメリカ音楽史に残るコンサートであると同時に、60年代のサイケムーブメント・カウンターカルチャーを象徴する歴史的なイベントとして語り継がれています。

-主な出演者-

  • ザ・フー
  • ジミ・ヘンドリックス
  • グレイトフル・デッド
  • スライ&ファミリー・ストーン

-出演を断ったアーティスト-

  • ビートルズ(一切のライブ活動を拒否していたから)
  • ドアーズ(音響効果が悪いから)
  • レッド・ツェッペリン(ツアーの最中だったから)
  • ボブ・ディラン(息子が病気にかかったから)

諸説あり

⑤サイケは暗い時代に突入していく

そんなサイケムーブメントですが、次第に暗い時代に突入していきます。

その象徴的出来事が「オルタモントの悲劇」です。

ローリングストーンズは1969年、ウッドストック・フェスティバルに対抗し「オルタモント・フリーコンサート」というフリーコンサートを開催しました。これはストーンズのツアー最終日に”クリスマスプレゼント”として開催されたもので、なんと入場料は無料。

集客人数は20万人〜50万人と言われていますが、警備面などあらゆる面で準備不足だったことでイベントは混乱を極めました。挙句の果て、そのコンサートの最中に観客が警備員に殺害されてしまうという事件が起こったのです。

その他にも若者が自動車に轢かれて死亡、麻薬中毒の男が用水路に落ちて死亡するなどこのコンサートでの死者は4名にものぼりました。

この一連の事件は「オルタモントの悲劇」と呼ばれ、愛と平和の時代に終わりを告げた象徴的な出来事となりました。

その他にも、チャールズ・マンソン率いる殺人カルト集団が数々の凶悪事件を起こしたりと、次第に時代は暗い方向へと進んでいきます。まさにヒッピーカルチャーの敗北といえるでしょう。

ねここしゃん
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サイケブームが終焉に向かう。

【ちょっぴり余談】
〜殺人鬼チャールズ・マンソンとは〜

チャールズ・マンソンはアメリカのカルト指導者であり犯罪者です。1960年代〜70年代初めにかけて「マンソン・ファミリー」の名で知られるヒッピー集団を率いて多くの犯罪に手を染めていました。中でも、映画女優シャロン・テートらを殺害した「テート・ラビアンカ殺人事件」で悪名高い人物です。

⑥サイケブームに共感できなかった人々

このように暗い事件が頻繁に起こるようになっていたわけですが、音楽面でも「愛と平和」のサイケデリックムーブメントに共感できなかったアーティストたちが勢力をつけるようになりました。

具体的にはアリス・クーパーザ・ストゥージズらが「グラムロック」や「ガレージロック」のような新たなジャンルで活躍し始めました。彼らの対等によって、「愛と平和の時代は幻想だったんだ」とサイケに夢中だった人々は目が覚めたように感じたのです。

サイケムーブメントは華やかな反面、数多くの才能あるアーティストたちがドラッグによって精神を病んでしまったり、死んでしまったりしています。

西洋の識者もこぞってドラッグを研究していましたが、「束の間の夢だった」という部分も大いにあったと言われています。このようにして、サイケムーブメントは終わりを迎えました。

現代音楽にもサイケのサウンドは息づいている

本記事では「サイケデリックロック」の誕生について歴史に沿りながら解説してきました。

サイケデリックロックは一時的なムーブメントではあったものの、音楽的な部分に関しては今でもしばしばリバイバルが起こっています。

サイケデリックロックが持っていたあの特徴的なサウンドは今でも息づいていて、現代でもテーム・インパラ(2007-)キング・ギザード(2012-)などのサイケデリックバンドがオーストラリア中心に活躍しています。

ねここしゃん
ねここしゃん
オーストラリアがサイケでアツい。

LSDなどのドラッグを端としたこの一大ムーブメント。
その特徴的なサウンドを一度体感してみてはいかかでしょうか?

ちなみにサイケ初心者が聴くべき名盤を↓でまとめてありますので合わせてどうぞ。

【朗報】20世紀の音楽史をもっと詳しく知りたい人へ

ちなみに、20世紀の音楽史をもっと詳しく知りたいという人にはこちら↓の本がオススメです。

ロックの成立から近年の音楽史までを通史で説明した書籍。
本記事で取り扱った「サイケ」の成り立ちや、ロック・ブルース・R&B・メタルなど全音楽ジャンルがとても分かりやすく解説されています。

戦いの音楽史」が面白いのが、「音楽ジャンル」と「社会史」をつなげて考察している点。この本を読めば「どんな社会的事件がきっかけでその音楽ジャンルが誕生したのか」が手にとるように分かります。

いわば「20世紀音楽の教科書」のような一冊。

そんな「戦いの音楽史/みの」については↓の記事で詳しく解説しているので合わせてどうそ。ほんとにオススメです。